今はクラブというの知ってるけどね、当時六本木界隈には派手だけじゃなくて気の利いたものも沢山あって、その彼女と何度か行ったのが砂のこれ。彼女はスコットランド系アメリカ人だった。面影がこのフレイヤ・メーバーに重なるはずだ。砂の上を裸足でぴょんぴょん跳ねて踊る彼女がまぶしかった。その光景がこの映画のほぼラストに出てくるライブ会場と同じ。正に青春の光と影。人生は晩年のためにあるらしい。

Very very very much!!!!!!!!

前提として、この映画はショッキングなシーンもあり、万人受けするものではないと思います。ですが高い解像度で観られると印象が変わる素晴らしい作品だと気づいたため、レビューを投稿します。描かれている「登場人物がそれぞれ何をしたいのか」を以下まとめました。・ニーマン「偉大な音楽家になりたい」・フレッチャー「人々を期待以上に押し上げる」・ニーマンの父親（「いい父親」でありたい）【ニーマンについて】ニーマンは自分が音楽家として成功することが一番欲していることなので、それ以外のことは優先順位が低くなっています。他の登場人物が気遣ってあげている時も、彼にとっては重要ではないことが分かります。一見気弱でおとなしいイメージがありますが、音楽のために誰よりも努力するタフさは一貫しています。自分が他の演奏者よりも評価されたときに思わずほくそ笑んでしまうのも、彼の内面が現れていて良いシーンになっています。他の演奏者がドラムを演奏している時も、むしろ失敗して自分が勝ちたい、という気持ちが伝わってきます。【フレッチャーについて】フレッチャーはやり方は最低ですが「ニーマンのパフォーマンスを最大化させたい」という目的の下に動いていることが分かります。恫喝じみた罵声のシーンでも、音楽的な改善点がどこなのか、ニーマンに精神的なダメージを与えつつも、出来が良いものを理不尽に否定するようなことはしていないです。（やり方に賛同している訳ではなく、彼なりに裁量を意識してやっている点が重要です。）またラストシーンでは即興のドラムソロでの演奏の道筋を先行して立てて上げており、指揮者として一流であることと即興で始まった演奏の構成を引き立てる役割を果たしています。【ニーマンの父親について】ニーマンの父親には直接自分が何をしたいかと言う発言は無かったと思いますが、対比するために言及しました。彼は「いい父親像」というものを持っており、それを全うすることに満足感を得ていると思われます。しかし結局ニーマンという一人の人間が何を求めていて、何をしたいのかということを全く理解できていません。フレッチャーの最後の嫌がらせを受けて慰めに行った行動は素晴らしいものです。それがなければニーマンが立ち直って演奏することも無かったとは思います。ですが、家に帰って気晴らしをすることよりも、ニーマンにとっては質の高い演奏をすることが人生の全てなのです。ニーマンが何をしたいのかを理解できていない（しようとしていない）ので、最後の演奏を見つめる表情もただ茫然と呆気に取られているだけになっています。他にも、以下のような点で自分のエゴを押し付けているだけであることが分かります。・ニーマンがポップコーンにレーズンを入れて、それに対して理解できない、変なやつだと言っている（ニーマンは父親にとって喜ぶものを入れてあげたことが満足だった）・フレッチャーの密告も、息子がどうしたいのかではなく「息子に酷いことをした指導者を社会的に復讐する」ことを自分がしたいために後押ししている・親戚が揃った食事の席で「一般的な良いこと」（職業として現実的な進路を取れているか、友達が多いか、健康で収入もあって長生きした生活を送れるか、などの世間体が良いもの）を「ニーマンがやりたいこと」よりも優先されるべきだと考え、別の道を考えて欲しいような方向で話している最後に挙げた親戚のシーンがあることで、息子の理解者ではなく、彼もまた利己的な人間であることが印象強くなっています。他の方のレビューでも言及されていると思いますが「ニーマンが最も求めていること」を理解して後押ししてやれている「父親」のような役割を全うできているのは、むしろフレッチャーなのです。【最後に】上記を踏まえた上で、それぞれの登場人物が何を求めていてどんな表情・受け答えをしているかを高い解像度で理解して観るのも面白いと思います。この自覚がなくても「お互いが自分のエゴで動いていて、自分の利益を他人より優先している」ことがこの映画の隠れたテーマだと思います。相手が何を求めていて、何がしたいのか。それに対して自分はどう振る舞うのか。その点を改めて考えさせられる程に、各シーンと登場人物の描写が作り込まれている作品です。他のドラム演奏者も、最初はニーマンを気遣って声をかけてくれたりしていましたが、結局自分が演奏できそうになった時にはニーマンには諦めろ、と言って見放している点もエゴが現れていて面白いです。

師の只ならぬサディスト振りは当世流コンプラ違反ブラック人格への嫌悪も生みかねず(笑)表は、獅子の子落とし、巨人の星、人格否定前提で世が成り立っていたいた昭和迄時代。見ようによっては、甘さや弱ささえ個性や格差無し的総保護傾向な今日日視点からはもはや犯罪レベルなシナリオ、展開とは言われるでしょが。けれど、このストーリーキャラクター設定は、そもそもそんな一般世間的我々凡人クラスでのキャラ設定ではないかと。凡人に非ずな「持てる者（師と弟子）同士」の「邂逅、逡巡、昇華」へのストーリー。故、前世代的であろうと何ハラであろうと、此処で描きたかった主人公とサブ達自体が、根柢、我々一般社会（的意識）にそもそも生きてない価値もほとんど置いてない（一例は、自分から先に惚れた彼女を己にとってもっと価値深い芸術の為にやっぱり捨てる辺りのリアル、意識が一般レベル迎合してたラスト辺り、より戻し期待行動も又リアル）。そういった凡と非凡を交錯させつつ沢山のエピソードの散りばめて、主体テーマを伝える為のエピソードや心情の表現展開はとても具体的で分かりやすく、お陰で納得、感動しやすい、「来たきたきた」「だよねーーー」と。つまりは、折々芸術折々文化折々武術・・折々スポーツ、ここではジャズ、それも世間迎合したレベルではない、高みが見える同じ世界（意識）の、「先に行き者」と「後から来た者」。故こそ無意識レベルでは認め合える解りあえる（とはいえ、現実世界主体の自意識レベルでは認め合う過程はそう単純でもないですが）狂おしい程に心奥に於いて共鳴出来るレベルのお互いだからこそのこの立場なり、共鳴と愛と嫉妬も渦巻く、言えば「神の領域」的ものを希求する魂を持つ様なこの手合いの「愛と共鳴」は昇華に至るまでは、往々逆に殺戮レベルになる場合も起こるのは想像に難くなく・・。ただ‥本当に、当世はこんな前時代的生きるか死ぬかの深淵を見なくても目覚められる芸術家が生まれる世紀になって来たのかもしれず、その意識からは野蛮と理解されない経緯でしょう。個人的は、これは一種のラブストーリー（芸術と才能、或いはその存在への純愛）と思いましたね。そういう意味で、純粋さと熱烈さがスキっとさせてくれる映画だったと。

演技や演出など映画的な満足度は高いですが、ブラック会社を経験した身からすると一部トラウマ的で不快な部分は残ります。賛否ある通り、熱血的な指導というのは一概に悪いとは言えないでしょう。ポイントは主人公ニーマンの言う通り「一線」を越えるか否かだと思います。まだ不快感が少ない健全な熱血的指導というのは、音楽へ真剣である故の厳しい指導であり、指導する際に故意に貶めたり辱める意図、卑怯な手段を含まないもので、より良い音楽を皆一丸となって作っていくために必要な指導だと思います。この教師フレッチャーは極度の人格否定が多く、・わざと主人公には練習時間が少ない状態で、事前に練習時間を与えた後任と競わせた・明言されていないが、楽譜が無くなったのはフレッチャーのマッチポンプである可能性が高い・母親の事や楽譜を無くさせるなど、主人公を詰ったり責められる材料集めを欠かさない・そして極め付けとして、ラストの楽譜の件などパワハラを行うにあたり卑劣な部分が多数ありました。教師フレッチャーの年齢になれば、自身の誤りを認めて（気づいて）正すことは難しくなりますが、過去の天才の一例からパワハラを信仰して妄執しているのは醜いですね。パワハラしないと天才が生まれないと思い込んで取り憑かれている。ちゃんと教師を辞めさせられたのは社会にとってプラスですが、ラストシーンのようなステージにまだ指揮者として立てているのは残念ですね。個人的には、この映画のラストも満足ですが、主人公の何らかの行動がきっかけで教師フレッチャーが自身の信条を改め、皆が協力してより良い音楽を作るハッピーエンドも見てみたかったです。

プロの現場の緊迫した空気や、登場人物の演奏に対する覚悟といったものが伝わってきました。映像描写も、特に演奏場面では、それを強調する作りとなっている為に臨場感があります。テーマとしては、型に嵌まった指導では最高のパフォーマーは生まれないという趣旨を伝えている作品ですね。(是非はともかく)作品内の指導面をみると精神論で自尊心をへし折る類いのただのパワハラ指導ですので、現代社会人が見ると不快に感じる人は多いでしょうね。